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「すぱいす」 2026年5月号

【元気の処方箋】
将来の健康につながる 子どもの運動・生活習慣

風薫る5月、屋外で体を動かすのに良い季節です。しかし最近は、スマートフォン(スマホ)やタブレットでゲームなどをして遊ぶ子どもが増え、体力や視力の低下が心配されています。そこで、子どもの成長に重要な運動・生活習慣について、熊本大学大学院の井福裕俊シニア教授に聞きました。

(取材・文=坂本ミオ イラスト=はしもとあさこ)

話を聞いたのは
博士(医学)
日本運動生理学会評議員
日本体力医学会評議員
日本生理学会評議員

熊本大学大学院教育学研究科 シニア教授
井福 裕俊さん



Q.子どもの健康で気になることは?ーコロナ禍によって低下した体力が回復していません
体力合計点 小学5年生の男女
体力合計点 中学2年生の男女
スポーツ庁 令和7年度全国体力・運動能力、運動習慣等調査から作図

小学校と中学校の体力合計点は、学校行事や活動、外出などが制限された新型コロナウイルス禍によって、コロナ禍前と比べて全国的に大きく低下しました(図1)


熊本県は全国平均を上回っていますが、それは熊本市を除く地域が引っ張っているため。熊本市は全国平均と同程度です。全体として中学校の男子以外は、コロナ禍前の状態に回復しておらず、特に、女子の体力の回復傾向が鈍いことが分かります。

成人後に、運動や鍛錬によって若年期の体力を超えることは難しいと考えられています。また、成人後の体力の落ち方は運動習慣の有無で大きな個人差が出ます。それだけに、高校卒業時までに体力を上げ、運動を習慣化させたいものです。

一方、肥満傾向児の調査では、小中学校の男女全てで全国平均を上回っています。体力合計点とは反対に、熊本市以外の地域が軒並み高い状況です。


Q.体力低下が心身に及ぼす影響は?ー将来の「健康寿命」に関わる心配があります

体力があると「疲れにくい」というイメージがあるかもしれませんが、それだけではありません。肥満や高血圧、糖尿病などの生活習慣病のリスクを下げる、意欲や集中力を高める、免疫力を高める(結果、感染症にかかりにくくなる)―など、健康維持・増進に大いに役立っています。

体力が落ちている状況が続けば、ゆくゆくは「健康寿命(健康上の問題で制限されることなく生活できる期間)」に関わってくると考えられます。

熊本県の平均寿命の長さは男女共に全国トップクラスですが、健康寿命は、男性が72・21歳、女性が75・34歳と、いずれも全国31位(2022年)。今の子どもたちの老人期に、熊本県の健康寿命が60歳代に下がってしまわないか心配です。


Q.体力を付けるにはどうすればいい?ースクリーンタイムを減らし運動する時間をつくりましょう
[図2]朝食の摂食状況×1日のスクリーンタイム(小学5年男子)
朝食の摂食状況×1日のスクリーンタイム(小学5年男子)の一例
出典: スポーツ庁 令和7年度全国体力・運動能力、運動習慣等調査より
※女子も中学校の男女も同様な割合を示しています

体力向上に必要な運動時間の確保に向けて生活習慣を見直しましょう。

子どものスクリーンタイム(テレビやゲーム機、スマホ、タブレットなどの画面を視聴する時間)の長さについて興味深い調査があります(図2)。


1日のスクリーンタイムと朝食の摂食状況の関係では、朝食を食べる頻度が下がるにつれてスクリーンタイムが長くなっています。ゲームなどで夜更かしして朝起きられないのか、保護者の子どもへの関わりが薄いため欠食しデバイス依存傾向が強まるのか―、詳しい背景は分かりませんが、基本的な生活習慣が整っていることの重要性が分かります。

また、1週間の総運動時間が長ければスクリーンタイムが短くなり、睡眠時間は長くなることも報告されています。運動、睡眠、食事を適切に取る生活習慣がデバイス依存に陥るのを防ぐともいえます。

WHOの「身体活動及び座位行動に関するガイドライン」(20年)では、子どもは
➀中等度以上の身体活動(主に有酸素運動)を1日60分以上行う
➁高強度の有酸素性身体活動や筋肉・骨を強化する身体活動を週3日以上行う
➂座りっぱなしの時間、特にスクリーンタイムを減らす
上記3点が推奨されています。参考にしてください。


Q.日常生活で保護者や周りがすべきことは? ー幼いうちは一緒に遊び 体を使う楽しさを体験させて

朝食に関する調査では、きちんと食べる子が徐々に増えています。学力に関しても朝食を取ることの効果がデータとして表れており、朝食の大切さが認識されてきていると思います。また朝食摂食には、「朝ご飯を用意し、食事を共にする」家庭の関わりの強さも見えます。

幼いうちは体を動かす習慣について難しいことは考えず、気候や天気が良い時は公園に行って走ったり、ブランコを押したりする遊びで十分です。そうすることで、子どもは体を使う楽しさを覚えていき、親子のつながりも深まっていくでしょう。

最近は、子どもの遊ぶ声を周囲が嫌がる風潮もあるようですが、子どもは体を使って遊んでこそ健康に成長します。「子どもに優しい」環境づくりも大切だと思います。


肥後医育振興会
福田 稠 理事

肥後医育振興会では、すぱいす「元気の処方箋」※1「子育て応援クリニック」「医心伝心」※2 を
監修しています。過去の記事は肥後医育振興会のHPからもご覧いただけます。
肥後医育振興会のHPはこちら

※1は第4週、※2は第3週に原則掲載


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