すぱいすのページ

トップページすぱいすのページ「あれんじ」 2022年7月2日号 > 【第58回 雲(くも)の峰(みね)】

「あれんじ」 2022年7月2日号

【四季の風】
【第58回 雲(くも)の峰(みね)】

「雲の峰」とは、もくもくと湧く夏の入道雲のこと。陶淵明の詩に「夏雲奇峰多し」とあるように、「峰」のように高くなる。学名は積乱雲で、人生の折り折りに見上げて、どこかなつかしい気がする。

【第58回 雲(くも)の峰(みね)】

俳誌「阿蘇」主宰 岩岡中正

先生は博覧強記雲の峰           中正

雲の峰ブリテン島は遥かなり        〃

 一句目は中学の担任の先生。「博覧強記」で、何でも知らないことはない。先生も生徒も雲の峰のように元気で、社会科の担任のこのクラスからは弁護士や新聞記者たちも出た。
 二句目の「雲の峰」は、青春の思い出の雲の峰。若い頃英国に学んだが、雲の峰を見上げては、もっと長く厳しく励めばよかったと、今は悔やむばかり。さらに「雲の峰」は、次の句のように、神秘的で力強い。なお四句目の「みどり児」は、幼子(おさなご)のこと。

雲の峰幾つ崩れて月の山          芭蕉

しづかさや湖水の底の雲のみね       一茶

雲の峰夜は夜で湧いてをりにけり    篠原鳳作

みどり児の知恵はみるみる雲の峰  吉住淳子