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「あれんじ」 2022年2月5日号

【慈愛の心 医心伝心】
【第99回】ホスピタリティー

女性医療従事者によるリレーエッセイ【第99回】

【第99回】ホスピタリティー
医療法人博光会 御幸病院
看護部長
(認定看護管理者)
井樋 涼子

 私は、看護師として仕事をする上で「ホスピタリティー」を大切にしてきました。「ホスピタリティー」を辞書で引くと「思いやり、優しさ、歓待」などと訳されています。看護師にとってそれは、「患者さんに心を向け、寄り添う言葉をかけ、望まれることを先回りしてケアする」ことだと思います。

 「触る」「握る」「支える」ことで患者さんに温かさを伝え、安心感を提供します。「聴く」ことで不安を表出してもらい、「話す」ことで不安の緩和を図ります。寄り添い、共感することが看護における「ホスピタリティー」だと考えています。

 看護部の理念は、「ヒューマンケアみゆき」です。全人的な側面から個別性を踏まえ、それぞれの患者さん、ご家族の価値観に応じたケアを提供することを使命としています。この過程で、「ホスピタリティー」が目指す「提供する側とされる側がともに満足しあえる関係」を常に意識し、大切にしています。

 先日、101歳を迎えられた患者さんの誕生会を、面会制限が緩和されたわずかな時間に、息子さんと一緒に病棟で行いました。糖尿病でも食べられるケーキを栄養士が作成、リハビリスタッフが会場を準備し、祝いました。

 息子さんは、「糖尿病で10年以上ケーキを食べさせられなかった。こんなうれしそうな顔を見たのは久しぶり」と喜ばれました。

 新型コロナ感染症のために面会制限を余儀なくされる入院生活。患者さん、ご家族だけでなく医療スタッフの満足度の向上につながり、「人が人を思う、人が人をつつむ」という私たちの理念を実現できた事例です。

 今後も私たちは、健康寿命の延伸と地域との共生・共創の実現を目指して頑張っていきます。