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「あれんじ」 2018年4月7日号

【四季の風】
第41回 梅林

めぐりくる季節の風に乗せて、四季の詩である俳句をお届けします

人逝(ゆ)きてより黄落のきりもなし        中正

 昨年十一月三十日、島田美術館の島田真祐さんが亡くなられた。どこか寒梅のように凜(りん)とした人で、残念だった。それは、「黄落(こうらく)」、つまり銀杏(いちょう)がしきりに散るころだった。


人逝きて春潮の沖のこさるる        中正

 今年になって引き続きという感じで、二月十日石牟礼道子さんが亡くなられた。翌十一日、三角西港の吟行を終えて通夜へ急いだ。春の海を見ていて、ああこれで不知火の沖の浄土へ帰られたのかと、深いかなしみに襲われた。


梅林(ばいりん)を行きて渚をゆくごとし        中正

はるばると聖鐘(せいしょう)とどく梅林(うめばやし) 〃

 もう梅の頃は過ぎたが、先日、「西山」つまり島崎を散歩して叢桂園から百梅園へまわった。少し山がかったみごとな梅林で、白梅が咲きはじめていた。梅林は私の好きなところで、ここへ来て水のように透明な日ざしを浴びていると、ふと春の渚(なぎさ)を歩いている気分になる。亡くなった人たちのことを考えていると、教会の鐘が、まるで弔(とむら)いのように響きわたった。