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「すぱいす」 2025年9月号

【元気の処方箋】
「コンタクトレンズ」による目のトラブルに注意!

眼鏡と共に、視力の矯正に欠かせない「コンタクトレンズ」。しかし装用やケアを誤ると、目の障害や疾患につながることがあります。今回は、コンタクトレンズの種類や特徴、目の健康のための留意点などについて、くまもと森都総合病院眼科医長の草野雄貴さんに聞きました。

(取材・文=坂本ミオ イラスト=はしもとあさこ)

話を聞いたのは
医療法人創起会 くまもと森都総合病院
眼科 医長 草野 雄貴さん

・日本眼科学会認定専門医
・難病指定医
・臨床研修指導医
・熊本県移植推進財団 移植推進委員
・熊本県臓器移植院内コーディネーター
・アイバンク医学基準委員会委員
・身体障がい者福祉法指定医
・更生医療指定医


【はじめに】女性、若者に多い装用によるトラブル

コンタクトレンズの使用者は、日本全体で約1700万人と推計され、7人に1人が装用している状況です。その中の7〜10%に何らかの眼障害が発生しています。

日本眼科医会、日本コンタクトレンズ学会、日本コンタクトレンズ協会の3団体からなる日本コンタクトレンズ協議会が行った調査では、「コンタクトレンズの装用が原因と思われる目のトラブルによって装用中止、あるいは一時装用中止を経験したことがある」のは、男女別では、男性が17.7%、女性が81.8%でした。女性の比率が高いのは、そもそも装用者に女性が多いという背景があります。

年代別では20歳代の37.4%、30歳代の34.0%に次いで10歳代が15.3%と、若年者に多く見られます。


【コンタクトレンズとは】視力を矯正する「医療機器」

コンタクトレンズは名前が示す通り、レンズが黒目(角膜)に「接触」して視力を矯正する医療機器です。

眼鏡に比べて、見た目が変わらない、くもったりずれたりしない、運動時などに邪魔にならない、視野が広い―などのメリットから、使用が広がっています。

その一方で、直接レンズを載せるだけに角膜を傷つける危険性があることや、裸眼と比較して涙から供給される酸素量が少なくなり、角膜が酸素不足に陥ることなどのデメリットも挙げられます。

そのため、コンタクトレンズには酸素透過性が求められ、装用やケアの方法を間違わないことが大切です。


【種類・特徴】素材や使用期間別に数タイプ

コンタクトレンズにはさまざまなタイプがあります。

素材で分けるとハードコンタクトレンズとソフトコンタクトレンズがあり、使用期間別に見ると、短期間で使い捨てるタイプと、長期使用の従来型があります。従来型では、ハードレンズが2〜3年、ソフトレンズは1年〜1年半が使用期限の目安です。

短期間型はすべてソフトコンタクトレンズです。1日使った後に外して再使用できない「ワンデイ(1day)」型や、最長2週間を限度に毎日付け外しして使用する「ツーウイーク(2week)」型、1〜3カ月の「定期交換」型、眠るときも外さない「1週間連続装用」型があります。


それぞれに長所と短所
コンタクトレンズのタイプによる長所と短所

ハードコンタクトレンズは、レンズの大きさが角膜より小さく、まばたきするたびに潤って目への負担が少ないのが特長です。また、酸素透過性が高い、異物が入ると痛みを感じるので気付きやすい、乱視の矯正に優れている、といった長所がある一方、外れやすい、長く(20年以上)使い続けているとまぶたが下がる「眼瞼下垂(がんけんかすい)」を起こしやすい、といった短所があります。

ソフトコンタクトレンズはその名の通り柔らかく、角膜より大きいため目になじみやすく、外れにくいという良さがあります。しかし、その快適性ゆえに異物が入っても気付きにくく、角膜障害に進行しやすいという面があります。

下図のような特徴を知り、自分の視力や生活スタイル、性格などに合うタイプを選ぶことが大切です。


【関連する障害や疾患】多いのは結膜炎やドライアイ 角膜感染症を合併する場合も

角膜に直接載せるコンタクトレンズは、目にとっては異物です。涙の循環や酸素透過が制限される状態になっており、これが続くと、角膜に傷が付いたり、アレルギーを起こしたりします。傷から病原性微生物が入ると重篤な感染症を引き起こし、失明することもあります。

コンタクトレンズの使用が原因となって起きる疾患で最も多いのが「アレルギー性結膜炎」。コンタクトレンズとの摩擦による「巨大乳頭結膜炎」や、花粉などがコンタクトレンズに付着して起きる季節性のアレルギーもあります。次によく見られるのが「ドライアイ」。乾燥感や異物感だけでなく、人によっては視力低下も起きます。

そう多くはありませんが、怖い合併症に「角膜感染症」があります。主に、緑膿菌やアカントアメーバという原虫が原因として挙げられます。角膜感染症で失明しかけている状態で受診する高校生もいます。


【CHECK】気を付けたい「カラコン」

若い世代を中心に人気の「カラーコンタクトレンズ(カラコン)」は、コンタクトレンズに色や模様を付け、 瞳を大きく見せたり、目元の印象を変えたりするものです。視力矯正を目的としない「おしゃれ」専用のものもあります。

インターネットなどで販売されるものの中には、ソフトコンタクトレンズが登場した1970年代に使用されていた酸素透過性の低い素材を使っていることがあります。角膜側に色付けしてあり、色素が角膜に移るといったトラブルなども発生しています。

カラコンは、他のコンタクトレンズと同じ「高度管理医療機器」です。おしゃれ用であっても診察を受け、処方してもらうことが大事です。


【予防】正しい装用とケア、定期的な受診を

コンタクトレンズによる目のトラブルを防ぐには

@手を洗剤で洗ってからコンタクトレンズを付ける
A交換するタイプのレンズは「こすり洗い」をする
B決められた使用期限、装用時間を守る
Cレンズケースを清潔に保ち、小まめに替える
―ことが大事です。

正しい装用とケアが感染症などの合併症を予防します。3カ月に1回程度、定期的に医療機関を受診することも大切です。自分では気付かない傷など状態を確認してもらいましょう。

コンタクトレンズに使用年齢の制限はありませんが、白内障があるとコンタクトレンズや眼鏡で矯正しても視力は改善しません。白内障の手術が優先されます。


INFOMATION

日本眼科医会のウェブサイトには、装用やケアに関する多くの啓発動画があります。こちらも参考に!

日本眼科医会コンタクトレンズ関連情報