私の仕事は、熊本で「私のカルテ」と呼ばれる一冊のファイルをがん患者さんに使ってもらうことです。「私のカルテ」は、県内のがん診療に携わる医師らが患者さんのためになるようにと願って作成したもので、15年前に誕生しました。今では県内で1万人を超える患者さんが持っています。
このファイルには、複数の医療機関でがんの治療を役割分担するための診療計画表が入っています。患者さんにも医療者にも、治療の見通しや身体状況が分かる良いものだと思います。これを使うことで、患者さんは医療者とのつながりを持つことができます。つながりは支えです。何より医師が書くひと言メッセージは、患者さんの大きな励みになります。
「私のカルテ」は、患者さんがどこにいても安心してがんの治療を続けられるように、複数の医療機関が協力して診療を行う仕組みそのものでもあります。熊本の優れたこの仕組みをもっと多くの患者さんに利用してもらうことが私の役目です。
日頃、診察を待つ患者さんが「私のカルテ」を手元に抱えている姿を見かけます。患者さんのためにと作られたこの「私のカルテ」を大切にされている様子を見るとうれしく、私も大切にしたいと感じます。
これからもますます良いものになるように、ICT化やモバイル化も目指しています。それがいつか、すべてのがん患者さんが持つものになるよう、高い目標ですが、がん患者さんの支えになると信じて、精一杯努めたいと思っています。 |