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「あれんじ」 2022年10月1日号

【四季の風】
【第59回 秋は旅に出よう】

 今日から十月、秋もたけなわ。鵙(もず)も鳴いている。秋風に誘われて、旅に出よう。

鵙鳴くやホームに立てばみな旅人(たびと)        中正

鵙鳴くやホームに立てばみな旅人(たびと)        中正

 俳句は日記のようなもので、その一句から楽しかった旅の風景がすぐよみがえってくる。最近いただいた今福公明『旅路』は、人生の旅であり鉄道の旅の句集。ページをめくると、SLの力強い声が聞こえたり、旅先の蕎麦(そば)屋の黒々とした筆のお品書きまで見えてくる。さわやかで、旅情たっぷりの句集。

SLの頑固一徹走る秋(大井川鐵(てつ)道)   今福公明

品書の墨痕(ぼっこん)にほふ走り蕎麦(山形鉄道終点)  〃

 最近は写真俳句も盛んだが、俳句はフォト感覚の写生から入ればいい。以下は、今よりもっと若い頃の宮崎の旅。一句一句から秋風が吹き、旅の仲間の姿が見える。なお三句目の「秋思(しゅうし)」は、春の「春愁(しゅんしゅう)」とはちょっと違う、秋のどこか物さびしい思いのこと。

万物のはじまりは霧かもしれぬ(霧島)    中正

一水(いっすい)のぐんぐん澄んで詩となるか(若山牧水生家) 〃
突如沖に白濤(しらなみ)あがる秋思かな(美々津港) 中正