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「あれんじ」 2022年8月6日号

【慈愛の心 医心伝心】
第103回

女性医療従事者によるリレーエッセー【第103回】

【第103回】自分の病気の履歴書

 私の看護師歴は40年ほどになります。長く、救急医療への対応を迫られる急性期の病院に関わってきました。
 救急車で搬送される患者さんや家族は混乱されていることがほとんどです。その中での看護師の重要な役割に、患者さんの現在の状態や過去の病気についての聞き取りがあります。
 患者さんは医師の前に出ると緊張され、症状や思いを十分に伝えられないことがまだまだ多いように感じます。特に高齢者にとっては「お医者さま」です。病気の上に緊張という状況に置かれます。
 そこで十分に時間をかけ、リラックスされた状態で聞き取りを行うことは看護師の大事な役割です。その大切な情報を医師に正確に伝えることが、その後の治療に大きく貢献します。
 現在の病気が、過去に患った病気に起因することは少なくありません。現在の状態については比較的容易に聞き取りが行えます。が、既往歴(過去の病気)については、患者さん自身も一生懸命思い出しながら「あれは長男が卒業した時だから自分は何歳の時だった? いや入学か?」など、記憶が曖昧で正確ではありません。ほとんどの患者さんがそうです。
 そこで私が患者さんによくお勧めするのが、自分の病気の年表を作っておくということです。患者さん自身が作るのが難しいなら家族が時間のある時に作成しておくと良いでしょう。
 いつ起こるか分からない自分や家族の病気に対して記憶ではなく記録することが、適切な医療を受けることにつながります。


帯山中央病院
総看護部長
小山田 つるみ