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「あれんじ」 2021年3月6日号

【元気の処方箋】
食事の基本を大切に〜実践したい9つのポイント〜

 もうすぐ新生活が始まる人やご家庭も多いでしょう。入学や就職など環境が変わる際、気を付けたいことの一つに食生活があります。今回は、健康の基礎となり、生活の潤いにもなる食事について、基本的なことをお伝えします。

【はじめに】「食生活指針」を参考に
【表1】食生活指針

 人の体は食べた物からできています。体調がすぐれないときには薬を飲んだり、治療を受けたりしますが、治療の中で食事を見直すこともあります。

 健康に過ごすため大切にすべきポイントを、文部科学省、厚生労働省、農林水産省が連携して策定した食生活指針(表1)を参考に確認していきましょう。


【ポイント1】笑顔の食卓 食事を楽しみ、集中する環境を

 食事を楽しむことはとても大切なことです。

 幼児期の子どもの中には、遊び食べやむら食いなどにより食事に集中しないことがあります。もちろん自分の好きな料理ではないことが理由の場合もありますが、食事を楽しむ雰囲気が作られていないことが原因となることが多いようです。

 例えば、ご飯を1人で食べさせたり、テレビや動画などを見ながら食べたりと、食事自体を楽しんだり、集中する環境作りができていないことが挙げられます。

 子どもだけのことではありません。家族皆が笑顔で食卓を囲む。そのためにはどうしたらいいのか考えましょう。


【ポイント2】体内時計をリセット 朝食が生活リズムを整える

 規則正しい生活リズムを繰り返すことは健康を保つ秘訣(ひけつ)です。これは体内時計と現代生活のリズムを合わせるためにも重要な方法の一つです。

 実はこの体内時計、24時間より少し長いのです。そのため、朝起きて浴びる光のような因子により調整されます。

 さらに最近の研究では、食品成分によっても調節されることが明らかになってきています。朝食は体内時計をリセットできる最も簡単な方法なのです。


【ポイント3】運動は最高の調味料 苦手な食べ物克服にも

 空腹になれば、よりおいしく食事ができます。おなかが空いた状態であれば、苦手な食べ物克服にも成功しやすいかもしれません。

 規則正しい生活の上に運動することで、何でもおいしく食べられ、体も元気になって一石二鳥です。


【ポイント4】1日1回は「定食」を 一汁三菜をイメージして

 食事のバランスを考えることはとても難しいようですが、和食の基本的な献立である「一汁三菜」をイメージすれば簡単です。

 一汁三菜の構成は、汁物に主菜1皿と副菜2皿を添えるもので、これにご飯や麺物を付ければ「定食」の完成です。

 汁物や副菜にたっぷりと野菜を入れることで必要なビタミンやミネラルを補給できますし、主菜にお肉やお魚を使うことで体を作るたんぱく質をしっかり補給できます。

 この組み合わせを1日1回どこかの食事に入れるだけで格段にバランスの取れた食事を取ることができます。ぜひお試しください。


【ポイント5】穀類は味方です 脳や神経系のエネルギー源

 低糖質ダイエットが流行しているせいか、ご飯やパンなどの穀類は嫌われているように思います。しかし、脳や神経系のエネルギー源は糖質が主体です。

 糖質摂取を制限すると、筋肉を分解してまで糖質を得ようとします。おかわりしてまで食べる必要はありませんが、全体の食事のおおよそ6割のエネルギーは糖質から摂取することが推奨されています。

 デスクワークの30〜50代女性が普通盛りのご飯を3食食べても、1日に必要なエネルギーの半分程度にしかなりません。ただ、単純に食べる量を増やせば太りますのでご注意を。


【ポイント6】サプリの代わりに野菜や果物 栄養素を過不足なく補おう

 バラエティーに富んだ食事を作るのは面倒ですが、多種類の食品を組み合わせればそれだけ栄養素を過不足なく補うことができます。

 また、機能性食品はもちろん、サプリに使われている素材の多くは食品ですし、まだ発見されていない成分も含まれているのが食品です。

 果物や野菜などあまり手を加えなくてもいいものなら、そう面倒ではないはず。普段の食事にぜひ取り入れましょう。


【ポイント7】薄味は健康への近道 塩分制限など受けない食生活を

 生活習慣病は、食事の影響が大きいのが特徴です。普段から食事に気を付けなければならないことはよくお分かりかと思います。

 たとえば、高齢になると若い頃よりも塩味を感じにくくなります。一方で、高血圧の治療の中には塩分制限があります。

 はじめから薄味に慣れておけば、塩分制限を受けるようなことも起きないのではないでしょうか。


【ポイント8】実家の味を大切に 郷土料理の継承を

 2013(平成25)年12月に日本の和食はユネスコの無形文化遺産に登録されました。さらに、地域の食材を生かした郷土料理は地方の宝です。

 今は移動の規制があり、郷土の味を楽しめない方が多いと思います。普段から郷土料理を取り入れて子どもたちにも継承し、離れていても故郷を感じる食卓を用意できるようにするといいですね。


【ポイント9】空腹で買い物に行かない 食べきり≠心掛けたい
【執筆いただいたのは】
熊本県立大学 環境共生学部
准教授
友寄 博子

博士(農学)、管理栄養士
専門:栄養学、食品機能性学
・日本機能性食品医用学会
・日本未病システム学会
・日本水産学会
・日本栄養・食糧学会

 最近フードロスが問題視されていますが、意外と家庭でのフードロスが多いことが分かっています。

 買い物にはおなかが空いた状態で行かないなどの工夫をすることで買いすぎ・作りすぎを防ぎ、“食べきり”を心掛けましょう。

【終わりに】食事に関心を持ち、楽しもう

 今回はポイントを9つ挙げましたが、いくつ実践されているでしょうか? 1つでも多く実践することで、健康を手に入れることができます。

 料理が苦手、作るには気合が必要と思う人もいるでしょう。気負ったり、罪悪感を持ったりすることはありません。最近では時短料理に力を入れている本やサイトがあり、手軽に料理を作る方法がすぐに入手できます。また、カット野菜を活用してもいいでしょう。

 これまで食に関して述べてきましたが、まずは関心を持つことが大切です。これからも健康で過ごすために、毎回の食事を大切にしましょう。そして、食事を楽しみましょう。