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「あれんじ」 2021年1月9日号

【家族の心配・不安に応える 子育て応援クリニック】
赤ちゃんがえり

Q2人目を妊娠。上の子が「赤ちゃんがえり」しないか心配です。

愛情の再確認作業

 妊娠中や出産後に、上のお子さんが親から離れなくなったり、おねしょをしたりするようになる「赤ちゃんがえり」。この現象を理解するために、少し子どもの心の中をのぞいてみましょう。

 生まれてすぐのベビーは母子分離されても泣くことはありませんが、その後、30pくらい(哺乳する赤ちゃんの目と母親の顔との距離くらい)の視力が出てくると一番近くで育児をしてくれる人の顔を認識し始めます。その大切な人を認識すると、他人との区別ができ、「人見知り」が始まります。

 目の前から親が見えなくなると泣き出したり後追いしたりします。また、保育所に初めて預けるときも泣きますが、そのうち泣かなくなりますね。これには「愛情」と「認知」が関係していることが知られています。いったん離れても「必ず戻ってくる」「自分は愛されている」と認知できると泣かなくなるのです。

 ここに突然と現れる次のお子さんは、その「信頼」を揺るがす存在となり、愛情の再確認作業が始まる。これが「赤ちゃんがえり」です。


スキンシップを大切に

 ではどう対応すれば良いでしょう? まず、妊娠中に前もって赤ちゃんが生まれることを伝え、喜びを共有しましょう。年齢にもよりますが、出産に立ち合わせることも良いとされています。沐浴(もくよく)、体拭き、着替えなどの手伝いも良いでしょう。

 また、上のお子さんとのスキンシップや、寝る前の絵本の読み聞かせなども大切です。お母さんにも余裕が必要ですので、祖父母や周囲の支援も重要です。

 新しい命は、それだけでも素晴らしいものです。家族皆で新しい命を迎えましょう。


赤ちゃんが生まれる喜びを共有しましょう 祖父母など周囲も支援を
熊本大学大学院
生命科学研究部
小児科学講座
准教授 松本 志郎