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「あれんじ」 2020年11月7日号

【慈愛の心 医心伝心】
【第89回】「できることを粛々と」

女性医療従事者によるリレーエッセー
【第89回】

【第89回】「できることを粛々と」
内尾土井クリニック
副院長
土井 國子

 新型コロナウイルスの出現によって今年、私たちの日常には幾つもの変化がもたらされました。
 「人との距離は2メートル」と言われて戸惑いを覚えもしましたが、時がたつにつれ、マスクや手洗いはすっかり常識。人との距離の取り方も、いつしか何となく身に付いてしまったようです。

 当初は不安と混乱で、とりあえずあれもこれもとさまざまな対策が盛られ、日常生活にも多くの制限がかけられました。

 しかし約10カ月の間に第一波、第二波を経験した今、いろいろと学んできた私たちは、いったん固く閉ざした扉を少しずつ、用心深く開いてゆく段階に来ています。

 積み重ねられた疫学的な知見を基に、飲食店や公共施設、高齢者施設、学校、病院など多様な場において、個別の状況に応じた対策をアップデートしながら、リスク低減のためのたゆまぬ努力が続けられています。

 最もハードルが高そうな「自由な人の往来」を取り戻せる日はもう少し先になりそうですし、ワクチンができても、それが世界に遍く行き渡り、本当に感染が終息するにはまだ時間がかかることでしょう。

 この禍を切り抜ける近道はありませんが、私たち一人一人が心がけるべきは、間違いなく感染のリスクを下げることができる基本の対策(手洗い、状況に応じたマスクの着用、3密回避)を粛々と継続することです。

 これから冬に向けて、慎重に、しかし過剰な対応や無駄は省きながら、確かな歩みをもって日常の再構築をしていきたいものです。