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「あれんじ」 2018年8月4日号

【慈愛の心 医心伝心】
【第71回】新しい薬への思い

女性医療従事者によるリレーエッセイ【第71回】

【第71回】新しい薬への思い
熊本大学医学部附属病院CRC(治験コーディネーター)/看護師
久本 佳奈

皆さん「治験」をご存じでしょうか。

 患者さんからは「聞いたことはあるけど、よく知らない」「副作用が怖い」「実験台ですか」「ぜひ試してみたい」など、さまざまな声が聞かれます。

 「治験」は、新しい薬の候補が「薬」として国に認めてもらうためになくてはならないステップです。実際の患者さんに使用してもらい、その効果と副作用を調べることをいいます。今ある標準的な治療は、これまでにさまざまな思いで参加してくださった患者さんたちの協力の結晶です。

 治験は試験的な治療ですので、安全のため細かいルールや計画に沿って進められます。特に治験を始めるときは、患者さん自身がそのことをよく理解し納得して、参加するかしないかを選ぶことが大切です。私たち治験コーディネーター(CRC)が説明を補足し、具体的な予定を立てて実際に参加できそうかを一緒に考えサポートします。

 細かい検査や副作用への不安、効いたときの喜びやそうでないときも、CRCは患者さんと思いや大変さを分かち合いながら共に取り組み進みたい、と私自身は思っています。

 一方、まだ治療法がない病気では、患者さん自らの働きかけにより治験が始まったり、患者さんが計画に携わったり、といったより積極的な動きも始まっています。

 医療の進歩には「治験」というステップがあり、そこに多くの患者さんの思いや行動があるということを皆さんに知っていただけたらと思います。