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「すぱいす」 2026年9月号

【元気の処方箋】
「がん薬物療法専門医」がいる 腫瘍内科を知っていますか?

「がん」は現在、日本人の2人に1人が生涯で一度は罹患(りかん)するといわれています。そうした中、がん治療は進化し、多様な方法・組み合わせが選択できるようになっています。がん治療で最近聞くようになった「腫瘍内科」の概要や役割について、くまもと森都総合病院腫瘍内科の釆田志麻部長に聞きました。

(編集=坂本ミオ イラスト=はしもとあさこ)

話を聞いたのは
日本内科学会 認定内科医・総合内科専門医
日本血液医学会 専門医・指導医
日本臨床腫瘍学会 がん薬物療法専門医・指導医
日本がん治療認定医機構 がん治療認定医
日本緩和医療学会 認定医・緩和ケア研修会指導者
難病指定医

くまもと森都総合病院 腫瘍内科部長
釆田 志麻さん


「腫瘍内科」とはどんな診療科?ー「薬物療法の専門家」としてがんの部位にかかわらず治療

がんの治療には、手術や放射線治療、薬物療法などがあり、腫瘍内科は主に薬物療法を専門とする科です。
例えば、胃がんや大腸がんなど消化器系のがんの場合、消化器内科で診断し、手術は消化器外科が担当します。その手術の前後や、手術ではがんが取れなかった場合などに抗がん剤、疾患によってはホルモン剤などを使って治療するのが、腫瘍内科です。


「腫瘍内科」とはどんな診療科?ー「薬物療法の専門家」としてがんの部位にかかわらず治療
[図1]腫瘍内科のイメージ図

がんの種類、進行度、患者さんの体力や生活環境などに合わせ、最も適した薬物療法を選択し、提供します。
がん診療は、がんができた部位ごとの専門科診療が長く実施されてきましたが、腫瘍内科は発生部位にかかわらず、薬物療法の専門家(*がん薬物療法専門医)として抗がん剤治療を行っています(図1)。

※日本臨床腫瘍学会 がん薬物療法専門医認定者は県内に20人(2026年7月31日現在)


腫瘍内科が果たす役割は?ー原発不明がんや重複がん 早期からの緩和ケアも担当

新薬の開発により有効な抗がん剤が増え、免疫療法も加わり、薬物療法は複雑化しています。腫瘍内科は、最適な薬を選択し副作用を抑える―。つまり、抗がん剤の専門家としての役割を果たします。必要に応じて、手術の前や後に抗がん剤投与も行います。

また、原発巣が不明な転移がんを含めて「臓器で分類できないがん・希少がん」の治療を担当します。例えば、皮膚のがんである「悪性黒色腫」が胃腸にできるケースや、肺以外にできる「小細胞がん」などがあります。

「乳がん+大腸がん」「血液のがん+前立腺がん」といった、同時に複数のがんがある「重複がん」の治療では、治療法全体を組み立てる役割も担います。

がん薬物療法専門医は、緩和ケア領域で使う薬も扱います。緩和ケアは今、終末期だけの医療ではありません。がんによる痛みが強い場合は、抗がん剤治療の前に痛み止めの薬を使用して治療を受けやすい状態にします。抗がん剤によってがんが小さくなり痛みが和らげば、痛み止めをやめる―といった使い方で、「早期からの緩和ケア」をしながら治療を進めるのも、役割の一つです。


他の診療科や専門職との連携は?ー「集学的治療」の過程で治療と生活の調整役も
[図2]がん診療の流れと連携(消化器がんの例)

より高い治療効果を得るために、手術(外科治療)や放射線治療、薬物療法などを組み合わせて治療することを「集学的治療」といいます。それぞれの医療の進化に伴い、さまざまな組み合わせができ、治療手段が増えています。同じがんでも、がんの進行度、患者さんの年齢や体力、がん細胞の種類などで治療法が細かく変わってきます。高度化・複雑化する集学的治療の段取りをつけるのも、腫瘍内科の役目の一つです。

腫瘍内科が行う治療は薬物療法だけですが、集学的治療の過程で、

手術前後の抗がん剤治療
手術や放射線治療などのタイミングの伝達
リハビリテーションの担当医への相談
退院後の看護などのソーシャルワーカーへの相談
食事についての栄養士への相談
―など、治療と生活の調整役も担っています。

複数の診療科、さまざまな専門職が連携し、チーム医療で患者さんとご家族を支えています(図2)。


釆田先生からのメッセージー治療しながら自分らしく生きましょう

もし、がんと診断されても「自分らしく生きることをあきらめないで」と伝えたいです。

抗がん剤治療が始まると「何もできなくなるのでは」と思う人がいるかもしれませんが、そうではありません。多くの場合、治療しながら、これまでの生活を続けることができます。

確かに、検査では疲れ、がんと診断されたら人生が終わるような気持ちになってしまうでしょう。それは正常な心理的反応だと思います。しかし、しっかり治療をしながら生き続けることができます。そのためにも、検診を受け、気になることがあれば早めに受診することが大切です。「がん」と言われることが怖いのではなく、調べずに放置してしまうことの方が怖いのです。


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