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「あれんじ」 2011年1月15日号

【見る・知る・感じる 熊本まつり探訪】
玉祥寺のこのみやおどり

女装した若者の舞で 子孫繁栄を祈願


開催日:2月27日(日)
開催場所:春日神社(菊池市玉祥寺423)
植木インターから車で約20分、JR豊肥本線肥後大津駅から車で約25分
(問)菊池市教育委員会 ☎0968(25)1672

宮座交代に合わせ 五穀豊穣を祈願

 菊池一族20代当主菊池為邦のころ(1446〜88年)、菊池市玉祥寺地区に守護神として建立された春日神社。毎年2月28日には、五穀豊穣を願い例大祭が行われます。
 この祭り前夜(27日)に、神社の拝殿で踊られるのが「玉祥寺このみやおどり」。「このみや」の意味や由来は定かではありませんが、その始まりは室町時代とも言われ、菊池市無形民俗文化財に指定されています。
 もともとこの地区には、神社の世話などを行う座組というグループがあり、その代表を務める宮座の交代の儀式が12月3日に行われています。この儀式は地元では、座渡しあるいは節頭渡しと言われていますが、この時、祭りの道具や書類なども引き継がれます。
 新旧の宮座の交代が終わると、年明けに豊作を祈願し祭りが催されます。その最初の行事として行われてきたのが、「このみやおどり」のようです。


長襦袢に手ぬぐい、どてらに編笠のいでたち

 この踊りでまず目を引くのが、ユニークないでたちです。派手な長襦袢をまとい、頭に手ぬぐいをかぶって女装した男たちが、「ヨイッサー」の掛け声で太鼓をたたきながら、讃頭(音頭をとる歌い手)の歌に合わせ踊りを披露します。
 また、神殿を背にして座る2人の御大将は、どてらに編笠、1人は腰に種もみの入った袋、背にたて杵をいういでたちで、踊りの見届け役を務めます。普段、家の中でかぶることのない笠をかぶる御大将は、祭りの中で神様の役割を担う神聖なものという位置づけにあるようです。


教えてください 「たて杵と袋の謎」

 御大将が持っているたて杵と袋には、実は意味があります。「このみやおどり」では、たて杵を男性、種もみの入った袋を女性の性器と見立ててきたようです。神聖なる神様の持つたて杵と袋。そして袋の中に入っている種もみが、発芽し実を付ける。これが、生命の誕生を象徴していると考えられています。
 この説を裏付けるように、以前は、御大将の前で踊る舞も、自分のお嫁さんの長襦袢をまとった新婚の若者が行っていたと言われています。子孫繁栄を願う人々の思いが伝わってきます。(談)


 熊本大学60年史編纂室長
 (前熊本大学大学院社会文化科学研究科民俗学教授)
  安田 宗生 氏