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「あれんじ」 2017年12月2日号

【慈愛の心 医心伝心】
【第66回】後ろ姿

女性医療従事者によるリレーエッセー【第66回】

【第66回】後ろ姿
熊本中央病院小児科
医師 
山本晶子

 「今日から入院で様子をみましょう」とお伝えすると、「今日からですか? 仕事を急に休むわけには…」とおっしゃるお母さま方が多くなりました。仕事と家庭を両立し、日々頑張っている方がたくさんいらっしゃるのだなと感じます。

 治療が必要なのに入院をなぜ躊躇するのか。若い頃はあまり理解できませんでした。それが、私自身東京で働いている時に娘が生まれると、すぐに助けてもらえる人がおらず、娘が熱を出すたびに職場に謝って仕事を休みました。

 外来では「保育園は集団生活なので、治ったかと思うとまた別のウイルスにかかって熱を出すことはよくありますよ」と説明しているのに、わが子となると「なんでうちの子はこんなに風邪を引くのだろう…」と思い悩むこともありました。

 仕事が終わらず真っ暗な中お迎えに行き、「お月様きれいだねー」と話しながら娘と帰った日々、寂しい思いもさせたなと思い出します。

 熊本へ帰って数年が経ち、娘もあと少しで小学生。「大人になったらプリキュアとお医者さんになるね」と言ってくれます。私は決してできた母ではありませんが、医師としてやってきた自分も含め、娘に認めてもらえているようでうれしく感じています。

 息子はまだ小さいのでどう感じているか分かりませんが、パパを目指して成長していってくれることでしょう。

 朝早くから子どもたちが眠りにつくまで、家事に仕事に育児に頑張っている皆さん、子どもたちはその後ろ姿を見てくれています。子どもと共に成長できる貴重な時間です。一緒に頑張りましょうね!