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「あれんじ」 2017年8月5日号

【元気!の処方箋】
正しい診断と治療で、完治を!! 足白癬(あしはくせん)(水虫)

 水虫といえば、「お父さんの病気」という印象が強いのではないでしょうか。しかし、最近は生活習慣の変化により、若い人たち、特に女性にも増えているそうです。

 そこで今回は、足にできる水虫=足白癬についてお伝えします。

【はじめに】足だけに感染するわけではない 真菌(カビ)感染症

 水虫(みずむし)とは、足の指や足の裏(足底)、爪にできる真菌(カビ)感染症です。足にできたものを足白癬といいます。

 実は足だけに感染するわけではなく、陰部や体にも感染します。陰部にできたものを「いんきんたむし」や股部白癬、体にできたものを「ぜにたむし」や体部白癬といいます。


【症状】かゆくなくても水虫かも? まずは足を見てみましょう!
爪白癬

 足白癬とは、皮膚の表面にある角質にカビの仲間である白癬菌が感染した状態です。感染しただけでは、あまり症状はありません。

 白癬菌に対する皮膚の防御反応として、炎症が起きればかゆくなりますし、角質を多く産生すれば、皮膚が硬く、がさがさしてきます。

 つまり、白癬菌の感染と人間側の防御反応が合わさって、症状となります。具体的には足白癬の症状は主に下記の3つのタイプがあります。

 また、爪白癬とは、白癬菌が爪に感染したものです。

 症状は爪の白濁(白く変色)、肥厚(分厚く変形)、剥離(ボロボロ)です。高齢者に多く、足白癬から徐々に爪まで感染が広がると考えられています。



【原因】白癬菌というカビです!

 水虫の原因は、白癬菌という真菌の仲間です。

 真菌は自然界に広く存在し、キノコや浴室の黒カビも真菌です。また、パンやお酒を作る時に使用されている酵母も真菌の一種です。

 プールや公衆浴場、体育館の床など、多くの人々が素足で歩く場所には白癬菌が落ちています。また、湿気を好みますので、靴やスリッパ、足ふきマットなどには多くの白癬菌が潜んでいます。


【診断】顕微鏡で白癬菌は見える!

 皮膚科では、水虫を診断する際に顕微鏡を使用します。

 ボロボロになった皮膚や水疱の角質、白く濁った爪を一部取り、特殊な液体に浸し、角質の中に隠れている白癬菌を顕微鏡で観察します。

 白癬菌を見つけることができれば、足白癬と診断できます。皮膚科医であっても、【メモ】の水虫に似た別の病気とだまされることもあり、診断が難しい場合もあります。


【治療】まずは塗り薬で。内服薬もある!

 治療の基本は塗り薬(外用薬)です。1日に1回確実に塗ることが大切です。入浴後は角質も軟らかくなっているため、入浴後に塗ることをお勧めします。

 かゆみがなくなっても、まだ完治していません。外用薬によって白癬菌の量が減ると、皮膚の炎症が治まり、かゆみがなくなります。

 しかし、この時点で外用薬を中止すると、再び白癬菌が増殖し、再発します。完全に白癬菌がゼロになるまで、かゆみがなくなっても塗り続けることが大切です。

 稀ですが、外用薬にかぶれてしまい、水虫が悪化したと勘違いしてしまうことがあります。その際には外用薬の種類の変更
や、内服薬を使うことで、良くなります。完治したかどうか、たとえ悪化したと思っても、皮膚科で相談しましょう。

 爪白癬は以前、外用薬ではなかなか治らず内服薬が必要でしたが、副作用や他の薬との関係で治療ができない場合もありました。

 2014年から爪白癬にも有効な外用薬が処方できるようになりました。しかし、足白癬よりも爪白癬は長い治療期間が必要です。根気よく塗り続けましょう。

 また、ローション薬には、爪に深くしみ込ませるためにアルコールが含まれていますので、皮膚に付くとかぶれやすくなります。薬液が垂れたら、ふき取るようにしましょう。可燃性なので火気厳禁です。


【予防(生活で気をつけるべきこと)】湿気、蒸れは大敵!

 夏の高温、多湿はカビの繁殖しやすい環境です。夏は足白癬が悪化しやすい時季です。

 足が水でぬれてしまう仕事や、長靴の着用は、白癬菌が元気になる条件となりますので、靴下を替えることや乾燥を心掛けましょう。

 また、脱衣場の床や足ふきマットがぬれている場合は、通常のカビと同様、白癬菌も潜んでいます。足ふきマットを小まめに乾燥させ、洗濯することで感染予防になります。

 プールや温泉の後にぬれた足で靴を履くと、白癬菌が繁殖しやすくなります。よく乾燥させて靴を履きましょう。


【終わりに】水虫は治る病気です 完治させましょう

 水虫、足白癬は恥ずかしい病気ではありません。まずは足の指の間をよく見ましょう。かゆくなくても、足白癬のこともあります。放っておくと、家族に足白癬をうつしてしまうかもしれません。

 水虫は治る病気です。正しい診断と治療が大切です。根気よく外用薬を塗って、完治させましょう。

 また足がかゆくなる病気は水虫だけではありません。かゆみがあれば、必ずお近くの皮膚科クリニックを受診しましょう。


執筆いただいたのは
熊本大学大学院生命科学研究部
皮膚病態治療再建学分野 
牧野貴充 講師
  
・医学博士
・日本皮膚科学会認定皮膚科専門医
【専門】
強皮症、膠原病